アリス幻想

スパンアートギャラリーの「 アリス幻想 」を見てきた。

参加している作家の名前は豪華で、その期待に違わない作品たちだった。いまいちよく分からないのもあったけど。

あれだな、ナイジェル・ハリスの鏡像変換してる作品はその下に置いてあった文も良かったので、あれもパンフレットに載せて欲しかった。アリスと言ったときに作中のアリスとアリス・リデルのずれから二重写しが生ずる。展示全体にわたって作中のアリスを扱うものと、アリス・リデルを扱うものとがあった。鏡像変換はその双方を写し込んでそこに鏡の国を描いて見せているのが素敵だ。

会場でついでにトーキングヘッズ叢書の『 幻想少女—わ・た・しの国のアリス 』を買って、読みながら帰ってきたのだけど、案の定というか『ローゼンメイデン』を扱った書評があった。その書評が言うほどにあれが評価すべき作品かというと私は疑問だけれども、でも「アリスゲーム」という設定だけは確かに評価してもいい。ドジスンによって理想化された少女という存在にアリスという名前があって、一方にドジスンと語らった人間アリスがいる。アリスというのはありふれた名前だけれど、遍在する「過去・現在・未来の少女=魔女」と「少女という概念の究極」とが同じ名前を共有するのは極めて自然なことだ。だから、確かに少女性とは何であるかを考えるなら、一方の対極である群れなすものからもう一方にある理想のアリスへの遷移でなくてはならなくて、やっぱりこの両極のアリスをうまく活かした設定なんだな。ま、それで少女と人形の重ね合わせっていうのもまあ、書評の言うことは分かるしね。

遍在し偏在するものっていうのは魅力的だよね。