オッカムのせいで心霊体験を仕損なった話。

中秋の頃に書いた原稿を公開してなったのを発見したので公開してみる。

なんか、懐かしい夢を見た。私の、今思い出したばかりという脚色されてる可能性も高い記憶を頼りにするなら、この夢は幼児期から繰り返し、数回見ている夢の1つ。ストーリーは2つあって、前半は今は覚えてない。後半は天動説的なモチーフによって外惑星を、なぜが外惑星のみを配置した太陽系儀を構成していくような夢。途中から分析的思考がいくらか戻ってきて、夢の中でそれを行使した限りでは、そうだ、たしか、これはNHKスペシャル地球大紀行 」を見て、それに影響を受けて前半の夢の内容をもとにふくらませた夢なのだな。後半の冒頭部に、あの番組のナレーションがかぶってたしな。だとすると、見始めた時期はその辺だ。

それはさておき、夢の中で、途中から明晰夢化して、物語を追っているのとは別の思考の流れが評価したには、これは結構美しい物語なんだわ。いや、それでも夢の中の判断だから当てにならないけど。 明晰夢は久しぶりだな。

で、必死に物語を書き留めようとしてた。そこで、明晰性が薄れてきて、書き留めようとしてるのは夢の中なんだけど。 今までも何回かある。文芸サークルを長くやってたから、自分の中から美しい物語を紡ぎだすことには執着が強くて、夢の中で美しい物語を見つけたら記憶し、メモしようとするのはもはや習慣なのね。一時期は話に聞いた枕元にメモをおいて、メモを取りながら、適宜続きを見るって言うのをやってたし。ただ、私の場合は要領が悪くて、大抵メモを取ってるのは覚醒状態じゃなくてまだ夢の中なのね。今回もそれで、どのように美しい物語だったかは忘れた。

でもまぁ、あの夢は多分私の中のかなり古い感覚に結びついてるし、この種の繰り返し見る夢の中では珍しく悪夢ではないし。病気で高熱を出すたびに見る同じ悪夢があるけれど。

半明晰状態での私の感覚では、この夢を私は大切なものだと感じてるし。

今までのメモとった経験上も、目が覚めてみたらたいしたものではないという例が多いから、がっかりしないために、そして健康のためにあれは無意識の世界に持ち帰ってもらってよかったのかも。 暴れん坊将軍 みたいな例外はあるけど。 あと、定理の証明ができた夢はいままでたくさん見たな。起きてメモを見たらでたらめなんだけど。

さて、で、そうこうするうちにいくらか目が覚めてきて、眼が開いた。網膜からの視覚情報が入り始めた。それで、さっきのメモは夢の中だったことに気づいて、慌てて記憶を呼び戻そうとした。まだ、上みたいに判断は下せるほど目が覚めてなくて。

でもなかなか、夢の記憶が戻ってくると、体の力が抜ける。眼が半めになる。焦点がぼやける。 このままだと、また夢の中だなーと思って体のどこかを動かしたりして、覚醒度を上げると記憶が不鮮明になる。無意識のふたはよくできてる。

で、そんなこんなをあまり深く考えずに繰り返すこと数回、放っておくと、反覚醒状態の方へ近づく傾向があることに気づいた。まぁ、寝てる最中だったし、それが自然か。 何回か試してみると、 夢に近づくほどに、体は動かなくなり、夢の中の記憶がもう映像として手に取れるところまで近づいてきて、体が浮かび上がるような感覚があることに気づいた。 で、初めて、ああ、この向こうに金縛りとか心霊体験があるんだなーと思った。

ちょうど、私が何やらもぞもぞと動き始めたからだろうか、 一緒に寝てた猫が何やら激しく毛繕いを始めた。

あぁ、猫ね。魔術的動物だよね。状況がよくできてるね。

うーん。今思うにはその心霊体験だかこの世の心理との邂逅だかを一度試してみるのも悪くはなかったのだけれど、そこまで頭が回らない状態では、見知らぬ状況への警戒心が先立って、残念ながら意識を上げる方向に動いてしまった。

だってね、覚醒度の上下を試してるうちに気づいたんだけど、できすぎてる。

ちょうどうまい具合に、カーテンが光を遮って、部屋は真っ暗。 錐体細胞の反応域を完全に下回って、桿体細胞の視覚に切り替わってる。視覚の改造能力は低くてノイズがたくさん入ってる。それがまた、ホラーな雰囲気を醸し出してくれる。 入眠から、おそらくはちょうど2時間経過時点。

慣れた自分のベッドで、安心感はある。たまたま、室温は起きてる最中で言う快適よりも少し高くて、ゆるゆると眠るのにちょうどいい気温。そして、カーテンに細い隙間ができていて、それが白いまっすぐな線に見える。たまたま少し斜めに寝ていたせいで、その直線を正面に見据えている形。

そして、規則正しく聞こえてくる虫の音。

これだけ、催眠状態に入るファクターが揃っていて、心霊を持ち出すのはオッカムのカミソリに反するよなー、と。入りかけの状態で思った。じゃあ、入ってもあまりいいことないんでない? それで思わず、眼を覚ましてしまった。

あー。私の意識はあの状態でもオッカムのカミソリとか言い出すんだ。安心でもあり、退屈でもあり。 心霊体験してみたかったような、そうでないような。残念なような、そうでないような。

とりあえず、面白い体験だったのでメモしてみた。さすがにタイプミスや変換ミス付きでMacBookにタイプしてるのは現実だろう。夢の中のメモではないだろう。

今メモをもとに遂行して公開用にMarkupしてるのが夢でないならね。あぁ、胡蝶の夢ね。