世界線航跡蔵

Mad web programmerのYuguiが技術ネタや日々のあれこれをお送りします。

2006年07月14日

共産主義とフリーソフトウェアに基づくはてな経済圏の研究

共産主義はなぜ破綻したのか?」を読んだ。ま、同感。共産主義革命をロシアや中国でやったところにそもそも無理があるよね。少なくとも、最低限今の日本程度には資本主義が爛熟してないと、マルクスが前提としてる土壌が育っていない筈。たぶん、60年代の日本じゃとてもじゃないけど、共産主義化は無理だったんでないの?

で、思うのは、フリーソフトウェア社会ね。

以前の記事で『断絶へ航海』のケイロン社会はフリーソフトウェアコミュニティに近いと書いた。あそこでは自由主義経済が行われてはいるのだけれども、生産力があまりにも強力であることと、贈与や貢献が貨幣として機能しているために見かけ上は原始共産社会的なシステムとなっている。

ケイロンは特殊な初期条件をあたえられた社会であるから、ケイロンがそのまま現実に登場しうるとは考え辛い。でも、似たような貨幣の意味の変革は長期的には発生する可能性があるだろうと思う。

フリーソフトウェアコミュニティの構造はケイロンに近い。でも、先の記事でも書いているけれども、ソフトウェアの世界で起きていることが他の領域ではあまり起こらないのは、ソフトウェア以外の財は複製が困難だからだ。この複製可能性のことをGFDLの用語に倣って、仮に透過的と呼ぶことにしよう。

ソフトウェアは、自由なライセンスの元で公開されている限り透過的でありえる。でも、一般の財はそうでない。でも、一般の財がどんどんコモディティ化していったらどうだろう。そして、非透過的財の全てがコモディティ化したなら、経済における実質的な競争の場は透過的な財の生産と所有を巡って行われることになる。ところが、透過的な財は本質的に独占が難しい。そして、難しいだけではなく共有したほうが自分の取り分が増えるという性質を持っている。だとすればその経済における営利団体の戦略は明白ではないか。

100年あれば、そうなる可能性はあるんでないの? それまでに持続可能な開発が可能となっていれば、ね。あるいは他の天体からの資源の調達も視野に入れて。

非透過的な財がコモディティ化して、経済における全ての競争が、フリーソフトウェア開発者が行っている自由競争のように行われるとしたら。そうなったら、最早資本主義と共産主義にどれだけの差がある? 差がないなら、プロレタリア独裁も革命も計画もいらないじゃない。そういうのはスケーラビリティやフレキシビリティを欠きがちだしね。営利団体の自由競争に基づく"貨幣経済"でいいじゃないか。そんな夢想をしてみたりする。

過渡期における混乱は想像できるけれどもね。ケイロン式社会を考えるなら、"貨幣"の意味が変わってより贈与的になるから。今、いわゆるWeb 2.0的戦略による営利活動が可能となっている背景には価値の多相性があるし、私が今の会社を選んでる理由だってそうだ。つまり、今の営利企業はその定義上、実際の経済における貨幣によって図られるところの富の集約を追求している。でも個々の人間が必要としている価値はそれだけじゃない。だから、そのギャップで儲けることができる。

集合知システムだって、集合知に参加してくれる参加者がなくては成立しないけれども、参加者はシステムへの関与に独自の価値を見出して、その価値をシステム内部で流通させているから、だから参加するわけでしょ。彼らはそのシステム内部においては貨幣という意味での価値を必要としていない。そして、その成果物として透過的な財が生まれて、Web 2.0的企業はそれを売って貨幣を手にする訳だ。

あるいは、はてなにおけるポイントだけれども、1ポイント=1円というレートを考えれば、はてな経済圏はかなり物価が安いと言える。売り主たる人力検索回答者たちはその時間をもっと他の、円経済の意味で儲かることに使えばいいのに、わざわざ安い価格ではてな市場で時間を売っている。でもそれはたぶん、1ポイント=1円というのが嘘なんだな。はてなの、人によっては窮屈とも言われることがあるコミュニティ内部においてはたぶん、ポイントに比例するようななんらかの見えない価値が流通している。売り主はやっぱり、実際にはほぼ円経済と同等の対価をはてな経済において受け取っていると言えるはずだ。はてなダイアリーで投げ銭するときだって、1ポイントに付随して1円よりも遥かに高い価値が動いている。

はてなでは当初、円に対する兌換制を導入することでユーザーを誘導していたけれども、はてな経済の発展に伴い、いよいよ兌換制を制限するらしい。つまり、はてな経済コミュニティにおける「ポイントに比例するなにか」という貨幣に基づく経済が、円本位制に依存せずに自律的に機能するようになってきたってことだね。こうすることで、いよいよはてな経済が回り始める。その経済圏において取り引きしている人たちはそれはそれで、普通に対価は受け取ってる訳だからなんにも不満はないわけね。

で、株式会社はてなははてな経済圏それ自体をメタに所有しているから、経済規模がうまいこと成長していけば、その規模に応じて1ポイントあたり1円が株式会社はてなの所有となる仕組みになってる。

今は、はてな経済と円経済が両立していて、株式会社はてなは円経済における営利企業だし、はてながインフラの調達に使ったりid:naoyaの生活費に必要だったりするお金も円だから、こういう仕組みが成立するんだな。

でも、私が夢想しているみたいに、はてな経済みたいなものが円経済を飲み込んでしまったらどうなるだろうね。あるいは、はてな経済に基づく営利企業が現れたら。非透過的な財のコモディティ化が進んでいけばそういうこともありえる。その過渡期においては、今のWeb 2.0企業はどうなるんだろうね。Web 2.0企業は、二つの経済の間の落差を利用してエネルギーを得ている訳だから。そして、「非Web 2.0」企業は?

混乱が生じるのは容易に想像が付くけれども、でもなんとなく、期待してしまったりする。100年あれば、可能性はあると思うよ。

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